MEMO
ミムラが見たり、聞いたり、感じた事を気ままに書くコラムです。
Jul.200822
『七夕金魚』
戒めの為とはいえ、悲恋をベースにした刹那の逢瀬を祝う(?)ような祭りって、七夕以外にはあるんでしょうか。しかもそれを見守るのではなくて「いやぁ、いいっすねー!お目出たいっすねー!ままま、その勢いでこちらもひとつ、よろしくどうぞー!」と軽口を叩くやり手営業マンのような見事な便乗っぷりで、五色の短冊に各々願い事をしたため、叶えてもらおうとは。短冊の願い事も元は手習い事の上達に限定されていたと聞くし、起こりは暦上のものなんでしょうけれど、昨今の七夕のあり方はちょっと不思議ですよね。
でも、私が数ある祭りのなかで一番好きなのは、きっと七夕だと思う。全ての飾りが、笹といっしょにさらさらと風に流れるのが気持ちいい。他の「くるぞくるぞ」感が強い仰々しい祭りよりも、あっさりきて、あっさり終わってしまうのが儚くていい。儚すぎて、物哀しくもあって、そこがまたいいという気がしている。
笹の葉の下、祭りに集う人々の雰囲気。他の祭りもそうだけれど、そこには勿論様々な食べ物が量産される屋台店と、少し怪しげなテキ屋さんの面々の醸し出す空気が欠かせない。
「お嬢ちゃんいくつ?」なんて訊きながら、「じゃあ一個おまけしたげるねっ」なんて言いながら、明後日の方を見ている。ずっと、屋台店の人全てに共通したこの目の合わなさ加減は何なんだろう、と思っていましたが、この間ベビーカステラを買っている時に、ブワッと頭の中をイメージが巡った
そうだ、いつかドキュメンタリーで見たあれだ。移動式住居(ゲル)の中で乾燥した羊の糞を燃料に「スーテーチェー」を煮詰めながら、ここらの草も減ってきたから明日の昼に移動する、と言っていたモンゴルの遊牧民のおじさんの目だ。目の前の事を淡々とこなしているけれど、頭と体は明日以降の為に傾いている。その感じが似ているんだ。
屋台店や的屋の人も、いわば流浪の民のようなもの。彼らの生活は、ここの祭りが終わったら次はあっち、そこが終わったら向こう、という日程に占められている部分がかなり大きい気がする。店の準備をしたら、あとは祭りが終わるまでそれを回転させていけばよい筈で、始まったと同時に終わりを目指して走ることになる。
また、金魚すくいや動物が景品になったクジ引きを夢中で覗き込む子供、その後ろから静かに笑って見つめる大人にも同じ空気がある。金魚すくいで掬われたり、おまけとして渡された金魚達の、一ヶ月後の存命率はどれくらいなのか、大人は知っている。
私自身、動物クジの最下等賞に該当するうずらを、二度も冷たくしてしまった。一度目のうずらとのわずか五日間の生活が終わる日、真夏なのに目を閉じて弱々しく震えるうずらを湯湯婆で暖めてやりながら、もう二度とこんな事にはするまい、と辛く思った。それなのに、一等に据えられた陸亀に釣られて二度目を迎えてしまった。子供の好奇心は純粋すぎて時々残酷な結果を産む。
子供だってほとんどが知っているのです。勿論初めての時はこの金魚がとんでもなく大きく育ったらどうしよう、プールで飼わなきゃかな、とわくわくするだけですが、二度目以降はそうではない。りんご飴を食べたり、飾りに目を奪われたりしながらも、手にしているビニールに包まれた水の重さを忘れることは無くて。この金魚、いつまで「保つ」のかなとどこかで思っている。始まりがきたら終わりがある事も実はわかっている。祭りの期間が終われば屋台は瞬く間に畳まれて、次の日に同じ場所へ行っても、飾りの残骸とソースに染まった割り箸がアスファルトに張り付き、たくさんの人と食べ物のニオイが点々と漂っているだけ。
くっきり天の川が見えても、七夕における織姫と彦星の逢瀬は始まった途端に終わりに向かってカウントダウンしていてその設定がよけいに祭りそのものが持っている諸行無常っぷりを煽る。そこが他の祭りよりも祭りっぽさを強く感じられていいのかもしれません。
七夕祭りに行くと、代金と引き換えにお腹もいっぱいになって、手には溢れるように物が増えていくのに、何かお金以外の大事なものが自分の中から減ったような、そんな気がしてならない。毎年、それが何なのか考えようとしてみる。でもそんなふと湧いた感慨も、笹の葉のさざめきに掠めとられて雑踏に入り混じり、流れて行ってしまう。さらさら、さらさらと流れて今年もわからず終い。
七夕の飾りが笹に結い付けられるようになった理由だけが、なんとなくわかる気がする。
2008.07.22 Tue.
News 最近のニュース
[雑誌]
8月15日発売 ウフ. (マガジンハウス) マガジンハウス .......続きを読む
新連載スタート『まみむメモ』[]
ミムラ主演映画「落語娘」のプレミア試写が決定! ミムラサイトをご覧の皆様の中から.......続きを読む
主演映画「落語娘」プレミア試写ご招待!![雑誌]
POCOCE 8月号 (ネオメディア) ※表紙&インタビュー 7月25発売.......続きを読む
『POCOCE』[mimulalala]
Memoページ更新しました。 『七夕金魚』 : MEMO | mimulalal.......続きを読む
『MEMO』更新[雑誌]
パンプキン 9月号 (潮出版) ※『私の転機』 8月20日発売.......続きを読む
『パンプキン』- >>ニュースのページへ
RSS feedについて
- mimulalala.comは、サイトの更新情報をRSSフォーマットで配信しております。
RSSリーダーで購読する- Six Apart:フィードとは?