MEMO
ミムラが見たり、聞いたり、感じた事を気ままに書くコラムです。
Aug.200730
『鯛で夏休み』
「夏休み」と聞くと、ふともものあたりが痛痒いような気がしてくる。9月を目前に引き潮の海水浴客と反比例して増えたくらげが漂う8月末の海で、触手に痺れながら遊んだ記憶が濃いせいだ。渋滞と人混みを避け、夏休みの旅行はほとんど毎年29、30、31で二泊三日!という強行日程だった。
年間を通して家族で旅行をするのはこの時くらいのものなので、目一杯遊び、親も親で楽しませようと頑張ってくれていた気がする。結構な量の思い出をつくってもらいました。
なかでも一番印象に残っているのは、宿泊先のレストランで「折角だから頼んでみるか。」と言って、父が鯛の活き造りを注文した事。子供心にも「高い」と思った金額。家は至って健康的な経済状況の家庭だったけど、両親は贅沢好きではなかったし、行事に無頓着な家族的には「らしくないことしちゃった感じ」でドキドキした。
そして更にドキドキすることになった。
『活き造り』なのだから当たり前なのだけど、まさかこんなにフレッシュだとは……。大きな舟盛りがテーブルに運ばれてくるやいなや、家族を取り巻く「やや後悔」の気配。
時折動く鯛に大いにびびりつつ、やはり味は美味しいし「折角頼んだんだし」という日本人古来の勿体ない精神でもそもそ食べ続けること10分。その時は訪れた。
鯛が、跳ねたのだ。舟盛りの器から、30cmの高さへ。
(卓上の30cmは思いの外高い。鯛の勇姿を讃えて0.3mと考えてほしい。)その勢いで器の外へ大根のツマ共々着地し、びりびりと全身を震わせた。
震えながら一瞬、目の奥の生気がぐっと強くなり、4人対1尾で無言の内に見つめ合う事数秒。鯛の目からゆらりと光が溶け出した。命がこと切れる瞬間を目の当たりにしながら、この場面は臨死体験の際の走馬灯に必ず入るぞ、と思った。
そしてあの鯛には内緒だけど、鯛はしめて少し時間を経たものの方が、断然好きです。だってしめたてより身がやわらかくてあまくて美味しいんだもの! ごめんよ、鯛。
2007.08.30 Thu.
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