MEMO
ミムラが見たり、聞いたり、感じた事を気ままに書くコラムです。
Dec.200721
『神様を食べる』
というタイトルはおかしな気がしますが、今の心情に一番近い言葉だと思う。母方の祖父は微妙にクリスチャンだったし父方は仏教系のようだけど、特に熱心に信仰している神様はいらっしゃらない。ただ個人的にいいな、と思うのは八百万の神様で、今回はその一部を食べさせてもらった気がするのです。
要するにえっらい美味しいお寿司を頂いた。
びっくりする程美味しい事は年に何回かある。でもあまりの素晴らしい味に涙が出てくる事は、当然の如く増えていくコンビニエンスストアや各種ファストフード店の横で、上下左右食べ物に囲まれて育った私には、そうそうある体験ではありません。初めてと言ってもいいのでは。
あと何回、このお寿司を食べられるのかしら。
そう考えた瞬間に、今、口にしている食物のありがたさに胸がいっぱいになって、その陰でいやしくももっともっと食べたい、と思ってしまった。
自分が消費生物である事の実感が、心地よく昇華していく。「いただきます」の意味に気付いたような、ますますその意味から遠のいたような、もうそんなのどうでもいいから次の一口を咀嚼したくてたまらないのが本音のような……。
食事中の適度な会話は空腹同様に最高のスパイスだと思っているのに、口をきくのが億劫で、三貫目を終えると同時にオットに「本当に申し訳ないんだけど暫し喋らなくていいか」と、了解を得た。出来る事なら口と鼻と耳と胃袋だけの存在になりたいくらい、全てに集中して食べたかったのです。
食べ終えた後は幸福感でいっぱいでなにも考えられませんでした。ぼーっとしている時もそれなりぼんやりと何かを考えているし、ここまで透明な気持ちになる事もそうそうない。うまいもんは世界平和に繋がるのではないか。実際同じペースで食していく隣の人と、無闇に目を合わせてニコニコしながら、黙って食べる、そんな空間だった。
お米の神様、魚の神様、薬味の神様、それぞれが殆ど壊されない状態で体の中に収まったようで……。それに比べると私が作るご飯なんて、そこそこ食べられる味でも間違いなく神様の抜け殻だ。キュウリのへたを切り落としただけでも神様はその食物から出て行ってしまう可能性がある。
食べた人が涙するような、神様在住の料理を一度でいいからいつか作ってみたい。というか、もう一度あのお寿司が食べたい。次は、いつ、私の胃袋に神様がきてくれるのだろう。
2007.12.21 Fri.
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