MEMO

ミムラが見たり、聞いたり、感じた事を気ままに書くコラムです。

May.2008 7

『酸化黄金週間』

連休だ、さあ出かけるぞ!という家に生まれなかった為か、はたまたお休みが世の中と連動していない職業に就いている為か、連休中の私は妙に冷めている。というか静かな外見を装って、内心では息をひそめてやり過ごさなければ、と闘っている。

ニュースの合間に読み上げられる渋滞情報を聞いたりなんかすると、さぁっと鳥肌が立つ。「例年よりも少ない傾向にあるようです。」という言い回しに、気持ちが泡立つ。例年、と平均を量って言える程、毎年同じタイミングで、同じような数の人々が、同じ様に動くことが信じ難いのです。

この季節は、本当にさわやかだし、爽やかでもあるし、さらにはサワヤカなのです。もう、何をどう変換しようが気持ちいい。気温、薄い羽織物をもてば半袖で十分。湿度、肌は乾燥せず癖っ毛さんの髪もうねらない程度。少し視線を巡らせれば若葉がきらめいて、花が咲き乱れている。

こんな天気に見守られ、心地よい空気に取り巻かれているのであれば、いつも出来ない事がなーんでも出来る気になる。あーんなとこに行ったり、こーんなことしたり。気持ちが伸びて伸びて、自分の可能枠を二、三歩出た所ではしゃぎまくってしまう。

ここ数日で家族のご飯会の為に皮から餃子を作ったり、また別の日は知人とご飯をしたり、半日だけ実家に帰ったり、いつも届かない部分に手をのばして掃除して、美容院に行き、また別の知人とご飯しながら、疲れている人を沢山見た。

夕方、青の優先道路から右折する際、対向車もこないしさっくり曲がって良いところを、あんぐり口を開けて十秒以上発進しないお父さん。その横に上を向いて半目のお母さん。後部座席にはチャイルドシートに同化して眠る、幼い娘二人。

下車する筈の駅に到着してから目が覚めて、慌てて降りようとした初老のご夫婦。急ぎ過ぎて奥さんの方が手提げの中身をぼろぼろとこぼし、先に降りた出目金顔の旦那さんが「スミコ!はやく!」と目を剥いてぶんぶん手招き。化粧ポーチとお財布を一生懸命拾っていた和金顔の奥さんは「う、ぁ!ああ!もう!!」と自分の後方へカロカロと転がっていったヘアスプレーのキャップを諦めて、駆け降りていった。

そして今日、私は歯医者の予約を入れていたのを16時だと勘違いしていて、15時半の予約であった事にはっと気付いたのが15時35分。タクシーに乗り込みながら電話で「すみません!15時半の予約なのに、勘違いしておりまして!あと十分以内に到着出来そうなんですが、大丈夫ですか?」と早口に伝えると「え!?えーと……あ?ああ、本日は16時の予約なので大丈夫です。ごゆっくりいらして下さい。」と優しく冷静な返答。

私が様々な疲れている人々を見かけたのはその場に私も居たからなのです。母の運転する車の助手席で、口を開けたお父さんと半目お母さんに。立って乗らねばならない何がぐりーんなのかわからないグリーン車で、金魚顔のご夫婦に。カフェで大あくびするお姉さんに。スーパーで苛立つ子供に。強いシンパシーを感じながら、しまった、と思っていました。今年のゴールデンウィークは、すっかり爽やかな気候にそそのかされてはしゃぎ、「過ごし過ぎて」疲れたしまった。酸化しない筈の金を、酸化させてしまった感じだ。Au2o3?

こんな休日じゃどこがゴールデンなのかわかんないよなぁ、とぎゅうぎゅうのスーパーの通路で考えていた小学校三年生の私の横で、母が「どうしてこんなに人が多いのかしら?やーねぇ。」と言っているのを聞いて、そうか、と思った。お母さんは普段通り生活の為にスーパーに来ただけだけど、要するにこういう考えの人がいるから「例年」という言葉が生まれるんだな。

どうして、どこに行っても混んでいるのかしら?どうして、どこもかしこも渋滞するのかしら?人人人、やーねぇ、まったく!と言っている本人が人間である以上どうにもなりませんね。本当にその事態をどうにかしたいのなら、自分が家に帰れば済む話です。そうすれば人一人、車一台の空間があきます。でも、気持ちいいから、出かけたいんだよねぇ。

さて来年、輝かしい黄金週間は酸化せずに済むでしょうか。

2008.05.07 Wed.

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