MEMO

ミムラが見たり、聞いたり、感じた事を気ままに書くコラムです。

Oct.200831

『親も知ってる親知らず その後』

左上の親知らずを抜いてから、一年経過した。親知らず跡地もすっかり普通の歯茎となり、なにもなかったような顔で奥歯を支えている。しかし私はこの一年ずっと気にしていた。上ではなく、下の二本の親知らずの動向を。

『父母へ。抜けました。痛みは全くなく、親知らずには見えない程に立派、と先生にも褒められ(?)ました。骨密度の高い現代っ子らしからぬ娘です。』

以前の抜歯の後に、持って帰ってブラシで磨いてやった歯の写真と共にこうメールした。以下、母からの返信。

『これは本当に親知らずですか??このサイズだとしっかり歯根があったのでは?煮干しをおやつにして、牛乳たくさん飲ませて、よく噛んで食べなさいって言ってごめんね。おだいじに。』

そうか、そういうわけだったのか。
一度は私を骨折から救った、あのカルシウムに傾倒したおやつが原因だったのか。カルシウムの過剰摂取としっかりめの咀嚼生活の顛末、下の2本に関してもあまりに立派に育ち過ぎていて大学病院でないと抜けないということを、左上の親知らずの抜歯の際に知らされたのです。あわわわ。


骨折にも怯えていた私だが、下の親知らずの抜歯もそれはそれは恐ろしい話をいくつも聞いていた。砕いて破片を取り除く、という施術方法もそうだが、術後も凄まじいらしい。止血しきれないままに鎮痛剤で誤摩化して寝て起きたらシーツがぬるっと血の海とか、頬がはち切れんばかりにぱんぱんに腫れて三日三晩泣いて過ごしたとか、痛くて全く噛めないから一週間卵豆腐とバナナを流し込んで生き抜いた、なんて。
うぉーどれもいやだよぅ。

でも、抜かねばならない。

根が楽天家なので普段はすっかり忘れており、思い出した瞬間だけ鬱々とした。夜中にふと目が覚めた時、半分くらいのサイズになった飴を我慢できずにボリボリ噛み砕いてしまっている時、次の出番を待って他の役者さんとお喋りしている時、脈絡なくボッとマッチに火がつくように唐突に思い出しては、肺をじりじり焦がされているような息苦しさを感じ、恐怖で溢れてくる唾液を飲み下した。
もともと詰まり気味の下の歯並びが、さらに徐々にずれてきているかもしれない。上の歯だったら良かったのに。若干の隙っ歯なので許容出来る、というか、むしろ都合が良いのになぁ。ああ、いやだぁ。


ところが一転、どうやら抜かなくて済んだ。
マネージャーに勧められた別の歯医者に行った際、ついでだからと親知らずの様子もコワゴワ見てもらったのだが、普通の歯同様きちんと生え揃っているから特に問題ないそうな。ブラシが届きにくい分虫歯になりやすいから要注意、とは言われたものの、四の五の言わず即刻大学病院に行け、と言われなくて本当によかったー!わーい!

しかし、別の恐怖がひとつ。新しい歯医者に行って歯を診てもらうと、お医者さんは必ず開口一番 「 矯正したんです
か?」と聞く。いえ、していません、と答えると「すごくいい歯並びですねぇ、標本にしたいなぁ」と冗談ではなさそうな本気の光を目に灯してぼそっと仰る。もう四人のお医者さんに、一人の例外もなく異口同音に言われている。嬉しいような、恐いような、複雑怪奇な気持ちでハハハ、とカラ笑いし目をそらして誤摩化しているのですが。

どうかそこそこの歯並びの患者さんには誰にでも言うことになっている、歯医者さん常套句のお世辞でありますように。

2008.10.31 Fri.

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