風の中にあたたかな土の香りを感じる季節になりました。とはいえ、朝晩の寒暖差もあり体調の調整の難しい時期ですが、皆様お元気にお過ごしでしょうか? 私の方は参加中の『ダメな私に恋してください』、もうあと1日で撮影終了という段階になり、撮影中のいろいろを思い出し妙に複雑な寂しさを感じております。

 昨夜放送の9話(記述は放送後の次の日に執筆しております)。撮影現場で試行錯誤した狙い通りなのか、最後の展開で視聴者の皆様(特にうら若き女性陣が)「っはるこーーっ!!」と絶叫したことと思われます。(“春子”は私の役名です。)実は私も、最初台本に目を通した時は自分の役ながら「春子よ、いったい何を考えておるのかっ!? 一途ではなかったのか、他の男性にモーション掛けるとは何事か!?」とビックリしていました(笑)
 重篤な風邪をひき、いい大人があの具合の悪さで病院へ行かないのか……。盛大に咳き込んでいるけどマスクなどもしないのか……(これは撮影の都合上リアル感を出すのは無理ですが)。恋するミチコの気持ちを知っているのにナゼ裏切るような性格の悪い自己中な行動に……? 今までの春子の行動原理(今は亡き夫の“一くん”一筋)といきなりかけ離れてしまっているので、9話ラストの理由付けが非常に難しい展開に陥っております。

 しかし一方で「わーついに来たかぁ」と覚悟も決めたのです。熱心な原作読者さんならお察しの通り(私もその一人!)、原作では亡くなっておらず存命で且つ素敵にフリーダムな“旦那の一くん”こと春子の夫を、「ドラマ版では行方不明or死亡している設定へ改変します」と知らされたオファー時からわかっていたこと。

 【流れによっては主人公ミチコの恋敵(障害・当て馬)にならねばいけない役どころ】。

 恨まれる役どころ! 思いっきり。原作とは異なるそれが春子の担っていたドラマ版での任務だったわけですねぇ。8話までノホホンと恋愛の良い面を語らう先輩然としていましたが、“良い人”ばかりでは盛り上がりに欠け、誰かがそれまでらしくない行動に出る必要がある。「いかに最終話に向けて盛り上げるか!」が命題の最終話前話らしい、TVオリジナルな例の展開なのでした。

 さて、一途な筈の春子が他の男性にモーションを掛けるという行動、具合が悪すぎて倒れ込みそうになり「支え」にしただけなのにそう見えたのか、他意はなかったのか、それとも実は恋心があって隠していたのか? 皆さんが;「うまくいきそうだったのに、春子のせいで……、嗚呼もう??」と焦れてくださる分だけ、無事与えられた役割を果たしたと考える面もある私です。いやぁ久しぶりに参加する恋愛主軸ドラマ、その醍醐味を感じた9話でした。次週の最終回をヤキモキと、これまでの9話分の流れを振り返りながらお楽しみにして頂ければと思います。


 急展開への(役柄としての個人的な)葛藤をお話ししたかったのもありますが、もうひとつ大事なお知らせです。

 私が大好きな向田邦子さんを演じます。二度目です!!(NHK『トットてれび』にて。)

 このオファーを頂いた時の私の興奮といったら、一気に体温が上昇、まだ寒い日でしたのにものの五分で小汗をかき、その後幸せでのぼせてぼーっとしました。制作側からは「以前にも演じられていますが、二度目というのは嫌ではないですか?」というお気遣いを添えて頂きましたが、「とんでもございません!」と二つ返事、前のめりでお引き受けした次第。

 一度目の時は憧れの人を自分が汚す危険性に長らく葛藤、しかし終えてみれば素晴らしい経験だったので、今回は悩むことはなく喜んで参加。むしろ、「一度演じただけで大感激だったのにこんな幸福があるなんて……。これは……、三度目も狙って今後の仕事をもっと頑張ろう??」と燃えたぎっているのでした。
 共演者の皆様も個性派揃いで、いつかご一緒してみたいなぁと願っていた方も多く、ワクワク。一生懸命やっていると時々降ってくる「ご褒美的ステキなお仕事」ですが、ここのところやたら頻度が高いので甘やかされ過ぎでは……と、お天道様の採点をちょっぴり訝しみつつ、懸命に取り組みたいと思います。


 常に仕事には恵まれておりますが、今年はいつも以上のハイペース。地上波、有料ch、放送済み合わせて都合四本の連続ドラマ出演が二月時点で決定。冒頭で紹介した『ダメ恋』撮了後、すぐに新規の映画撮影と向田さん役含め連続ドラマの撮影が二つ並走、三車線状態で走ります。通常これだけ立て込むと、どの作品かは諦めないとスケジュールが成り立たないのですが、これまた不思議なラッキーで(そしてマネージャーの調整と先方のご理解によって)なんとかなっている。ありがたいことです。集団劇を担う一人の役柄として頑張ります。是非ご鑑賞くださいませ。

 芽吹きの時期に仕事が充実しているのは、季節の波に乗せてもらっているようで気持ちがよいものですね。任せられる役柄が多数になっても、丁寧さと情熱、しっかりした準備を忘れず、どの役もきちんと実在させられるように努力し続けます。
 皆様も春を楽しんで快くお過ごしになってください。ではまた~。

*追記*
現場で何人かに「風邪ひきのあの声どうやってるの?」と訊かれたのですが、9話の風邪ガラガラ声と咳はこの数年通っているボイストレーニングの賜物。筋力でコントロールして喉を痛めないようにした特殊な発声なのです。真似すると喉を痛めますからご注意を(笑)

2016.03.09 Wed.


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