|
毎春楽しみにしている公園の婀娜っぽい濃紅色の木瓜が今年は狂い咲き、隣町へ出る途中にすっくと立つハンサムな山法師にも、毎年の挨拶を済ませました。急転して梅雨から夏へはじけ飛んでいきそうなこの5月末、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は少し前まで4つの作品を行って戻って、大変よく働きました（笑）
期間中唯一、撮影を空けていただいていた毎週1日も、２０１５年初舞台稽古中に骨折した肋骨のリハビリ関係のトレーニングが目的。しかしこの日も早く終えられる日はNHK国語総合ラジオの収録にも向かい……（前memo記載の「文字以外の要素を含んだご依頼」がこちらの件。不慣れなチャレンジ系仕事ですが、毎回音声の不思議を感じつつ、大変楽しく勉強・参加しております）。
重なっていた4作品それぞれから「もっとうちに撮影日頂けませんか」と要請されていたのを、なんとかかんとか調整して全てに参加することが叶ったので、マネジャーはじめ関係者の皆様のご協力あっての完走です。
走り終えてふと腰を落ち着け思い返すと、どの役もカラーが違って、演じていてとても楽しかった！ 男性を凌ぐ勢いで成功したい野心家でありながら、情を捨てきれず中途半端に陥る不器用な“倫子”（『女の勲章』）。よい娘であろうとするあまり実母の介護状況に追いつめられ、その弱った心を悪人に掠め取られ意図せず犯罪加担してしまう“咲子” （『犯罪症候群』）。毎晩夜中にソースを買いに来るという、謎の女性“ミカ”（『ソースさんの恋』。放送前なのでネタバレは控えます）。そして私が演じるのはこれで3度目となる、超有名時代劇ヒーローのあのお方の“妻”（これも情報解禁をお待ち下さい）。
どの女性も全く違うそれぞれのポリシーや信念を持っていて、生きる時代も1950年代、現代（ごくリアルを追求）、現代（ややファンタジーを追求）、ざっくり300年前ですから。役者としてこれ以上面白いこともありません。贅沢にくたびれた三ヶ月でした。
さて、特に占める時間の多かった作品、『ソースさんの恋』について少し。
普段ですと自分で勉強し、準備としてアイデアも多々用意していき、必要とあらば積極的にプレゼンテーションしてみる私ですが、今回の作品には少し違ったアプローチで臨みました。といいますのも、製作陣が今回の作品のベースとして据えていたものが、私にはやや縁遠いものだったからです（単に恋愛ドラマという意味ではなく）。
改めて勉強する時間がとりにくい中、打ち合わせにて佐野プロデューサーの熱意や村松監督のバランス感覚を伺って、「ならば今回はお任せして、私は制作サイドの想いを忠実に表現する受注職人のように携わってみよう」と考えるようになりました。これを機に、自分の持っていない要素を発芽させるのも一つの手ですが、一歩引いた姿勢でお芝居へ身を投じるのもまたきっと楽しいはず、とワクワクしながら撮影し、新たな感覚も残り面白い経験となりました。
また、自分はつくづく運がいいなぁと感じる件として、監督率いる撮影チームの団結力があります。立場関係なく、適時率先して仕事を見つけキビキビたち働くクルーの姿。差し迫った日程での撮影で大変なことも多いでしょうに、いつも明るく、意欲的に仕事をする人の多い現場でした。「自分も頑張ろう」と、任せられている領分にぐっと短時間で身が入り、集中できたと思います。おかげさまでスケジュールを見て「こ、これは……ゴクリ…（撮りきれないかも？）」と固唾を飲み心配していても、毎日驚くほどするすると撮影が進みました。
撮影が速い → すべてのシーンの台詞含めた内容、1話7話2話5話など、バラバラに撮る中で前後の流れをしっかり覚えていないと、当然まずいことになります。シーン数が多い日などは少し目を回しましたが、大きな流れ部分の予習はしっかりやって、スタッフの方々が作り出してくださる順調な波に乗って撮了の港へ帰港できたことを、本当にありがたく思います。
正直このチームの促進力がなければ、私は疲れの上に疲れが上塗りされ、疲労しきっていたでしょう。それが終えた途端に「さぁ、ずっと待たせていたあの本たちを読もう！」「棚上げの課題に心置きなく取り組めるのが楽しみ……」等、いつも以上に活力に満ち満ちており、夫と小旅行も繰り返しておりますので、とてもよいくたびれ具合で終えられたのだと痛感します。いやぁ、本当によかった。
そんな『ソースさんの恋』は6月1日より、毎週木曜23時からNHK BSプレミアムにて放送です。こんな裏の撮影チームワークも頭の隅において、どうぞお楽しみに。
先々でのまとまった旅の計画を夫とあれこれ話しつつも、新たな仕事のご依頼も頂戴しています。しかし、「こ、この時期にこれを……？ ゴクリ…（再び）」「そうなんです。もしお引き受けすると日程がスゴイコトに……。私もチーフもミムラさんの体調が心配なので、どうか無理はしないでください」と注意付きで企画書を渡されるという事態……。しかもそれが大変魅力的な内容で、どうしてこう現在興味のある事柄ドンピシャリの依頼を振っていただけるのかと、またしても己の運の良さにウハウハ喜んでおります。
さぁて、今春も相当に活発でしたが、今度こそ未知の仕事量となりそうです。どうなることでしょう。撮影に入るまでにはもう少し時間があるので、その間はこちらも多くいただいている執筆系仕事に注力して、しっかり準備して臨みたいと思います。
寒暖差、湿度の上下、気圧の高低と、変化激しく体調管理の難しい今ですが、目の前にはいよいよ過酷な夏、その前の最終調整期といえます。どうぞ暑さに対応できる体に整える気持ちで、移ろう季節を楽しみつつお過ごしなってくださいませ。
2017.05.27 Sat.
|
