重要な新情報が次々と数時間ごとに出てくる日々、多業種に大きく影響が出て苦しい状況の方も多いことと存じます。亡くなられた日本、及び世界中の方々のご冥福をお祈り申し上げます。

 我が家では昨年末、夫から「大陸で原因不明の肺炎流行中」と話があったのが最初です。まだ気軽な「早くおさまるといいね」「似たようなケースでハクビシンが原因だったっけ」程度の日常会話でした。個人的に衝撃を受けたのは1月下旬の 〈米国の感染調査関係者が現地で感染〉 というニュース。予防知識に最も長けているはずの人間が感染するなんて……普通ではないことが起きているのではないかと夫と情報を集めて話し合いました。
 各国のニュースを読んでも私には基本的な医学知識がないので読み違えも多く、その都度不明部分を夫に質問したり、新規の関連論文について教えてもらったりして、不安を適正サイズに保つことができて助かったと思います。仕事への余波もゼロではありませんが、影響は最小限で済んでいる方です。ありがたい思いで現在を迎えています。

 世界中の人の健康、経済の見通しに不安を抱えた今ですが、エンターテインメントは日常の基盤とは違う役割です。ここでも何度か書いていることですが、こんなに多くのバラエティ番組(ドラマ含む)を無料視聴できる国は、先進国中でも日本だけといっていい。その上配信サービスもどんどん多様化し、過去作品含めプロアマ問わない面白いものが山のように存在する時代背景。そんな中で迎えた今の状況。感染症の世界的流行という大きな抗いようのない外的要因からですが、これまでと仕様の異なる時期に入っていくことになりそうです。

 しかし役者の仕事における最重要点は、「ご依頼頂いた役を誠心誠意全うすること」で常に変わりありません。仕事の在り方が変わっても「質」は向上していけるように。ご覧になる皆さんの心が少しでも晴れ、心の栄養となるように。幸い多くの勉強は在宅中でも十分可能なため、気になっていたことを集中してインプットするなど、この期間中にも先々“いつか”のための準備を重ねていきたいと思います。

 終わりの見えない路に立ち、日常生活に戻れない不安やストレスで消耗が続くと思われますが、何とかこの状況を乗り越えられますよう、皆様の健康をご祈念申し上げます。


 ……と、このままでは畏まった内容で堅苦しいので、少し通常のペースに戻しますね。以下、意図して気楽な方向に振りますが何卒ご容赦ください。


 時間軸を戻して作年末の出来事からざっと箇条書きで振り返り + お知らせ1件です。

・昨年末からの時代劇作品3連続撮影に大喜び(一作は念願の「時代劇専門チャンネル」で、古くからの日本名らしく「美村里江」に改名した甲斐を感じました)
・70cm(!)の塩鮭1尾が北海道から、面白デザインの「むむむ」Tシャツが兵庫から送られてきた楽しい年末
・その他の映像作品・執筆でも嬉しいご依頼が続きありがたい年始
・2月にはエッセイコンテストの審査員も初体験(幅広い年代の優れた作品を読むことができて、執筆者としても貴重な経験となりました)


 <お知らせ>
 4月22日 4冊目の著書、短歌の本ができました。



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 こんな状況で自著の告知はきまりが悪いのですが……。それを脇へ置いても、自宅で各々過ごす時間がぐっと増えた現在は実に「短歌向きの環境」と言えます。そんな作歌オススメ論も含め、どんな本か以下情報です。
 2016年初夏、青土社『ユリイカ』の短歌企画のご依頼があり5首を寄稿。年末に書籍化のお話を頂戴し、17年から制作開始。19年晩秋までの約3年で700首作歌しました。収録されるのはそのうち236首。編集さんのアドバイスを頂戴しつつ推敲し、もう一段階練り上げた歌が掲載されています。(私の著書としてははじめて電子版にもして頂けるそうです。)私から自主的にお願いした<おまけ>として……
 ・制作中3年間のドキュメント的作歌エッセイ10編
 ・向田邦子さん関連の寄稿エッセイ3編(かつて向田さんも連載されていた「銀座百点」掲載エッセイなど)
 ・短歌製作中にヒントになった書籍52冊の情報
 ・挿絵も全て私が描き、軽い鉛筆イラストで45カットほど
 ・選ばれなかった歌も含む700首一覧

 短歌の面白さに3年間浸ってきた人間としてとして、(健康である前提での)現在のような“特殊なお籠り環境”は作歌に向いているとオススメできます。
 意識さえあればいつでもどこでも一人でできる。普段と温度差のある状況はむしろアイデアが湧きやすい。過去の記憶も潤沢なアーカイブとして使い放題(なんでも材料になる)。31音なのですぐにできる。うまく仕上がると気分がスッキリ晴れる。うまく仕上がらなくてもやる気が出る。短いので大失敗にもならない気安さあり……。


 奈良時代から『万葉集』などに収められていた五・七・五・七・七形式の和歌。優に1200年を超えて現存し、この間に日本にも大変多くの困難な時期がありました。現代短歌として廃れず残っているということは、人間が生き物として暮らしていく上での、なんらかの必要要素が詰まっているものだからと、今の私は感じます。実際に自分の生活や想いを短歌の形におとした後、ホッとする思いや慰められた感覚を得たことも一度や二度ではありません。

 すぐに小説を書くことや、作曲することの難易度は高いですが、短歌や俳句・川柳はスマホ、または紙とペンさえあれば記録していけます。家で鬱屈とした気分になった際は気軽にお試しください。学生時代に「素敵な詩歌には憧れるけど、どうしても作れないな。今後の人生で接点はないだろう……」と思っていた人間(私)もハマったのですから、騙されたと思って是非。


 現実的な問題は、自分の力だけではどうにもならないことも多い。しかし心の在り方だけは、常に自分で選択することが可能です。少しでも自分の心が華やぐ明るい要素を見つけ、この時期を心残りのある過去にしないよう工夫して過ごしていきたいと思います。皆様もどうぞご自愛ください。

2020.04.22 Wed.


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