舞台「家族熱」、終えました。
 劇場に足をお運びくださったお客様に、改めてお礼申し上げます。貴重なお時間を費やしていただき、誠にありがとうございました。共演者並び関係スタッフの皆様へも御礼申し上げます


 さて、今回の舞台、高揚感や楽しい気分はいつも通り多分にありつつ、一度も緊張しませんでした。もともと新人時代から緊張はあまりしない方、初舞台に上がってもそれは一緒でしたが、それを超えて今回は終始リラックス状態。

 向田作品(の三年後設定)的に、過去から積もった心の澱をどんどん口から発散していく流れのためか? 今回の演出的に、TV作品での芝居に近いせいか? 舞台独特の疲れもあまりなく……。

 ふと「こんなに自分が楽しいばかり。これは何か根本的に間違っているのでは?」という感覚が湧きました。自分が楽しんでいる時、それはそのままお客様にも良いエネルギーとして伝わると思います。ただ、作品の内容として+となるかどうかは全く別なので、それを危惧し、数千円分のチケット代に届いていないような気分になったり……。

 結果的に、3人4脚で2週間稽古を共にしてきた演出家・お相手が声を揃え「大丈夫だよ、心配しすぎ!」とのことで、「そうなのかな」と基本に立ち返ったのですが……。なんだかお客様のために、もっともーっと凄いことを為さねばならない、そんな心地がしていました。余裕があったからなのか正体は不明ですが、経験のない面白い感覚だったと思います。向上心の権化といいますか、チームメイトとしては常に一生懸命さが前面に出ているので暑苦しいですね(笑)
 事前準備は惜しまず(むしろこの作業こそ大好き)、いざ本番を迎えてみれば楽しいばかりで緊張もゼロ、というのが最近の私のようです。


 舞台袖で本番を控えている時、右には「家族熱」原作の黒沼家の後妻・朋子、左に前妻・恒子。後ろの遠いところに原作者・向田邦子さんがいらっしゃるような気持ちでした。心の中で声がします。

朋子「わたしはなんでも大丈夫よ、あなた(ミムラ)に合わせるわ……」
恒子「あたしんとこは手を抜かないでよ!」
邦子「…………ふっ」(鼻で笑うのでなく、ごく短い低い笑い声)

 こんな3人の年上女性と一緒だったので安心でき、余裕があるほどに疲れもなかったのかもしれません。兵庫大千秋楽後の楽屋裏にて、出演者二人が誕生日を迎えるタイミングでしたので、その二人分の誕生日ケーキでありがたくお祝いしていただきまして。その際、「公演回数足りない、この倍(30回)やりたかった」と大げさに語り、それを聞いたスタッフから即座に「15回が限界!」と、過密スケジュールでヘロヘロの悲鳴を上げられた私でした。(きっちり1ヶ月内に、稽古2週間、東京本番1週間、地方都市公演1週間。)


 さて、この公演と共に、カタカナの「ミムラ」名義も幕を閉じました。

 記念すべき「芸名ミムラ終了の2018年6月12日」は、マネジャーとも帰路を別々にし、とある場所で一人だけでゆっくりお祝いをしました。
 15年前、全くの演技素人だった人間(私)が、TVドラマから映画、舞台での二人芝居まで走らせて頂いた。それどころか、舞台取材時や公演中に会った人達からよく「二人芝居、大変でしょう?」と訊かれましたが、「いいえ、楽しいばかりですよ」とゆったりした気持ちで返せる、現在の成長的経験値となりました。

 これは、これまでお世話になってきた多数の方々のお陰です。

 お一人ずつ思い出せる限りの方々を思い浮かべ、改めて置かれている環境をありがたく感じました。応援くださっている方々、お会いしたことがなくともお世話になってきた方々へも、感謝の気持ちが無数に湧いてきて、快い夜でした。
 13日の帰宅後は、夫へも思いつく限りの感謝を伝えました。活動15年の後半重要部分は、間違いなく夫のサポートがあってこそ。人生の大事な時期に出会え、手渡された知識や体験談の多くを仕事に活かすことができ、つくづく恵まれていると感じます。あたたかい心で16年目のスタートを迎えられそうです。


 さあ、引き続き、「美村里江」としてどの作品もしっかり取り組んで参ります。応援頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願い致します。


——————ここだけのおまけ舞台裏——————
 実は東京で1公演だけ、 突然の“しゃっくり”発生で窮地に陥り必死でした。避けようのない開幕数分で起き、半ばで幾分収まったと思いきや再発、舞台上でずっと出続けていた事態。うっかり盛大に「ヒック!」とやってしまったら、笑いに転がして逃げられるような内容ではないので、これをお客様に気づかれずどう回避するか、上演中1時間20分頭フル回転。(この時も「あら、どうしよう」と思いつつなぜか緊張はせず。)
 結果、2人きりで舞台に上がっていた相手役にも、マネジャーその他の身内スタッフにもずっとしゃっくりが出ていたとは気づかれず、無事?終幕……。恐らくお客様でも気づかれた方はなかったと思いますが(アンケートも確認済み)、もしもお気づきの方がいらしたら、申し訳ありませんでした。生体である限り避けようのない事態、どうぞお許しくださいね。寧ろ気づけたら素晴らしい?(笑)
 しかし80分間力一杯こらえた代償として、翌日から数日間、横隔膜近辺と背筋の筋肉痛が残りましたとさ……。

——————公演中のお手紙など——————
 観劇にあたりお手紙を寄せてくださったお客様方、どうもありがとうございます。どれも丁寧な言葉で綴られていて大変嬉しかったです(私のファンの方々はみなさん読み易い文章がお上手!)。
 手違いで遅く預かった手紙もあったのですが、公演中お守りとしてずっと控え室に置き、何度か読み返しては励まされ、さらに力をいただきました。お誕生日のお祝いも、いの一番にありがとうございます。
 溝端さんのファンの方で、私にもバラを贈ってくださった方。美しい濃いピンク、鏡前に飾って楽しみました。共演の私にまでお気遣いをどうもありがとうございました。

2018.06.20 Wed.


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