大河ドラマで長く同じ役を演じるというのは、大変楽しいものです。< 大久保満寿 >は特に楽しい要素が多かった。基本は気の利く奥さんで、機転も利く賢母。それでいて実はほんの少しだけ粗忽者の面があり、そこを皆に気づかれまいと一生懸命。そんな人間らしさが面白い人物でした。
中でも特に期待していた、大久保の妾“おゆう”さんとの対面シーンですが、どんな内容になるのか色々なバリエーションを想像していました。しかし、台本が進み史実の重要部分が加速するにつれ、大久保家の本妻×お妾バトルは、もはや出てくるとシリアスな本筋のお邪魔になるかしら……。と、気になってきました。
いざ台本があがって、「ああ、なるほど」と感じつつ、台本には描かれていない部分を楽しく想像しながらリハーサルと撮影に向かいました。と、いいますか10ヶ月演じてきた実感として、「きっと満寿はこうするな」というのがくっきりと立体感をもって見えてくるのです。
そして、実際に会ったおゆうさん役の内田有紀さんとも、「おゆうの方は仕事で人を相手にしていた人だから……」「満寿は背伸びしていても田舎の女、対面したら……」など、多くの部分を二人で共感・共有しました。この女性二人だったら、きっと、こんな流れになるんじゃないかな、というざっくりした感触が同じだったのです。これは嬉しく「そうですよね!」と盛り上がりました。(雑談では好きな向田邦子ドラマの話なんかもして、楽しい時間でした。)
ところが、男性目線では違うことがよくあります。当然のことです。
監督には別のお考えがあられました。真剣に10ヶ月向き合ってきた満寿の特徴から想像できる着地点もご提案しつつ、結果的に細かい部分まで監督の指示に従ったお芝居で撮影を終えました。ある意味<男性バージョンのオチ>といえるかもしれません。役者には自分の作った役どころにこだわるのと共に、例えイメージと違っていても指示された部分を忠実にこなすということも重要です。
ご覧になったお客様はどうお感じになるのか、今から楽しみです!
史実ではおゆうの子供も大久保家で共に暮らしたようです。正助の正妻×お妾騒動がどんな風にまとまったか、どうぞ見守ってください。(本来こういったことは書かないものですが、今回は「満寿とおゆうの件はこれでおしまい」ということで謎めかして書き残しておきます。)
———————— 大河ドラマ打ち上げにて ————————
携わる人数の多い大河ドラマ。今回はなんと650名も参加していらしたとか! 皆の想い溢れる挨拶で、予定時間を超えていくのはどの作品でも打ち上げの“あるある”です。今回も司会進行の方が冒頭で「ご紹介人数が多いので、様々な想いもおありと思われますが、どうか手短に……」とアナウンスしたのですが、そうもいきません。
挨拶の登壇は家柄ごとに。私も大久保家の一員として上がりましたところ、まず今回の実質的ヒロイン?とも言える私の旦那さぁこと大久保利通(正助)氏が、熱い思いを乗せたお話をしっかりと。一年以上培ってきた西郷どんとの分厚い友情の痕跡を、妻として横で感慨深く見つめていました。
その後、私へマイクが渡り、まずは大河ならではの本格的セット、細部に至る扮装の元にお芝居が出来る喜びと、その場を整えてくださった現場スタッフの皆様への御礼を述べ、一度頭を下げました。
と、そこで下げた頭を戻さぬうちに「ありがとうございました!」と司会の仕切りが入り、挨拶が全て終わったようにされてしまったのです(笑)
あらら。
共演者の方々にも、方言指導や所作指導の先生方にも、満寿という面白い役を頂戴したことも含め御礼を申し上げるため、せめてもう10秒ほど話したかったので残念!
でも、自分の持ち時間すら旦那さぁの分として、3歩下がって内助の功という感じで考えれば実に満寿らしかったような……。その後も「手短に」と10回近くアナウンスが入りつつ、3分以上の方も多かったので、20秒で終えた私は進行的にもちょうどぴったりの挨拶だったかもしれません。
しかしながら、長らくお世話になった御礼はちゃんと申し上げたかったので、この場でもう一度。
キャスト、スタッフ、関わってくださった全ての方々へ厚く御礼申し上げます。あいがとさげもした! 視聴者の方々に、最終第47話まで楽しんでいただけますように。
2018.11.20 Tue.
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